ひどい雨降り

Debussy雨の庭を学生時代、試験で弾いた。というよりも、弾かせていただいた、っていうかその・・多分、当時の担当教官だったピアニストの樋上先生のガマンと忍耐の支えられての出来事であったと思う。
おかげで、試験の必要性でも無ければ、一生さらうことがなかったであろう曲を体験した。
レッスンは苦労して練習して臨んだのに、弾き始めてまもなく先生はククク・・と笑いをこらえている・・・それでもまたしばらく弾き続けていたら、アッハッハッハ!と大笑いをしはじめた。
あまりにも元気よく笑っておられるので、仕方なく弾くのをやめて先生の方をみたら、・・・・まだ笑っている・・・笑いが収まるのを黙って見ていたら突然、「小杉君ねえ、あなたはDecrescendしてくところで、どうしてだんだん力が入っていくのよ?」だって。・・・・ほんとうのところは、必死で弾いていて、音を外さないようにしながらデクレシェンドかけるような音のコントロールなど私の指ではできなかったのだけれど、私には先生のその日の一言が、私にはとっては音楽の普遍的で本質的な部分に気づかされた、といえるくらいとても大きな一言になった。先生にしてみれば、ありきたりで当たり前の、面白くない副科ピアノのレッスンだったんだと思うけどね。「そうか、力が抜けていくとデクレッシェンドになるんや・・・そうか、だからあの曲もあそこでaccel.、あそこはtenutoが・・」といった具合に連鎖反応を起こしていった。もう35年くらい前の出来事だけれど、いまだに「雨の庭」で「樋上先生」なわけです。おせわになりました。

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